コントと喜劇（コメディ）はなにが違うのか。コントと喜劇の違い。

　コントと喜劇（コメディ）はなにが違うのかということについて急に考えたくなった。
　ぱぱっとググってみたけど、ちょうどいいかんじのは見当たらなかった。

　コントとは元々フランス語で「短編芝居」という意味があるらしい。ただ、これだと今の日本で一般的に流通している意味とはだいぶ異なっちゃう。

　本当の○○、真の○○みたいな言い方ではなく、ある程度一般に流通している言葉のイメージから、離れない形で考えようと思う。

　コントと喜劇という言葉を定義して、その違いを考える時に、ファースとか、ヴォードヴィルとか入ってくると、話がややこしくなってくるので、「コントと喜劇（コメディ）」という軸で考えたい。


　さらっとググったところでは、コントと喜劇の違いを、尺（上演時間）の長さとか登場人物の数とかで線引する考えもあるみたいだ。
　これも一つ有力な定義だと思う。


　けど、それだけだと個人的にはしっくりしない。もっと重要なポイントがあると思う。



　たとえば、コントか喜劇かその区別をあまり考えずに、その舞台を見たとしよう。

　一応、コントと喜劇のどっちに属していたとしても、笑えるはずだ。

　まったく、笑えなかったら、その人にとっては、コントでも喜劇でもない。
とはいえ、他のお客さんの多くが笑っていたら、一般的にはそれはコントか喜劇にはなっていると言える。笑えなかったほうが他の人と自分は違うという事実を認めるしかない。

　で、とても笑えた芝居を見て、

「とっても、笑えて面白かったんだけど、なにか物足りない、、、、」

　って思ったら、それはほぼコントだ。

（ただ、同じ作品を見て、とても笑って疑問を持たずに満足して帰る層がいることにも留意が必要）


　また、角度は違った話になるけども「喜劇は芸術たりうるが、コントは芸術たり得ない」と言えるだろうと思う。

　ここの違いは何かと考えると、人間であったり社会であったりを深く洞察して、鋭い風刺または巧妙な構成で人を感動（笑い）させたら、それは芸術作品であり喜劇なんだろうと思う。

　そういう作品は、笑わせられるという点でおもしろいだけでなく、見ている途中や見終わった後に、人間の内面に思いを致すような時間帯がかならず訪れる。

　だからこそ、喜劇は演劇であり芸術なのだろうと思う。

　よくできたコントはやはりホンも練られていて、役者もオモシロくて、ある種の虚構の世界に引きずり込まれて、そうなったらもうドッカンドッカン笑うしかない。
　その優れた技巧は、もはや芸術性すらあるけれども、そこでいう「芸術」は、クオリティがめちゃくちゃに高いという意味の「芸術」であって、一般的な意味での「芸術」ではない。

　それで、コントのもともとの意味が「短編」というのは、とてもおもしろいなと思って。
　舞台作品が、芸術（喜劇）であるためには、一定の時間の長さを必要とする。まれに30分位でそこに至るものもあるけれど、99％は無理だ。リアリティを失わない中での説明とか伏線とか考えていくと短い時間では限界がある。
　つまり、短編だと、現在の日本で一般的に流通している意味のコントから脱することは難しいということは言える。
（例外はあります。）

　日本の喜劇の大家といえば、故井上ひさし氏だが、氏の有名な言葉として

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」

　というものがある。

　この言葉の解釈は、いろいろなところで触れられていると思うので、スルーするけども、ここには喜劇という概念にとって示唆深いものがあるんじゃないだろうかと思う。

　まぁ、別に、私たちは、演劇にこだわってません。って言われたらそれまでなんだけども「演劇」を冠する以上は、やはりコントにとどまらず喜劇を目指してもらいたいと思う。

　政治や時事問題を扱ったとしても、それが表層的なものであり、揚げ足取りレベルの掘り下げにしかなってなかったら、コントどまりだし、深く掘り下げることができていて、そこで笑いを中心とした感動＋αを与えられていたら喜劇だろうと思う。

　逆に、コント作品で、そこまで長いのがないのは、やっぱり刹那的な笑いだから、長くしちゃうと飽きちゃうんだろうな。

　しかし、喜劇もコントもどっちも世の中に必要なものだ。何も考えず短時間に笑いたい時もあれば、笑いつつも笑うだけで終わらないようなものが見たい時もある。
　



（参考）
片桐仁が考える「コント」と「演劇」の違い
http://best-times.jp/articles/-/1894

ヴォードヴィル（ウィキペディア）
https://goo.gl/Y1WmU8

ファース・笑劇（ウィキペディア）
https://goo.gl/oJQgSQ